被害届の提出は,捜査機関に対して犯罪被害に遭ったことを申告するための書類であり,投資被害に遭った場合においても,加害者の刑事処罰を求める上で重要な手続きとなります。

本来であれば,被害者が被害届を提出した場合には,警察は必ず受理をしなければなりません。

しかし,被害届を提出する際,「自分は被害者なのだから,ともかく被害にあったことを伝えれば,あとは警察がすべて捜査をして証拠収集し,加害者を検挙してくれるのだ」という受け身の姿勢ではうまく行かず,被害届が受理されないこともあります。

被害届を出す場合には,加害者を処罰して欲しいという熱意を伝えることも重要ですが,どのような被害に遭ったかについて具体的に説明できるようにするとともに,被害者側でできる限りの証拠を確保しておくことが大事です。

具体的には,次のようなことに留意しておくべきです。

  1. 被害事実を具体的かつ正確に申告すること

警察官は,被害者の話を聞いた上で被害届を受理し,被害者の立場にたって捜査を行うことになりますが,被害者の話があいまいで,どのような被害に遭ったかよく分からないままであれば,犯罪が成立するかどうか判断することすらできません。

したがって,被害事実について,時系列にしたがい整理していくことが大事です。

 被害事実を正確に申告するためには「5W1H」(Who(誰が)When(いつ)Where(どこで)What(何を)Why(なぜ)How(どのように))を意識しておくと,説明がわかりやすくなるでしょう。

  1. 証拠を確保すること

次に,被害者側でも証拠をできるだけ確保しておくことが必要です。 

「証拠は,警察が捜査の中で差し押さえや押収などをして集めるべきだ」と思われるかもしれませんが,基本となる証拠(加害者とのやり取りを示すLINE等の履歴,投資をしたことを裏付ける振込明細や暗号資産のアカウント画面)については,被害者側で整理をして被害届の提出の際に持参するべきです。

事実関係について証拠でできる限り裏付けることで,警察としても犯罪が成立する可能性が高いと考えるため,被害届の提出を受け入れてもらいやすくなります。

また,加害者の住所や氏名が不明な場合には,警察は加害者の特定に関する情報や証拠がないか尋ねてきますので,被害者側でもできる限りの情報収集をしてこれを警察に提供することが必要です

  1.  前提となる知識についても説明をすること

被害届の受理の判断をする警察官は,必ずしも投資の知識があるとは限りません.投資について全く経験がないどころか,投資の手段である暗号資産などについてもほとんど何も知らないということもありえます。

そして,警察官は自分の知らない分野の事件であるということで,被害届を受理したがらないということも起こり得ます。

そのため,これらの前提となる知識についても被害者の方で,資料を準備するなどして説明をすることが重要です。

なお,警察署には投資被害に関する専門部署はありませんので,投資被害に詳しい警察官が配属されている府警本部(県警本部)の担当部署(例えば,警察庁ではインターネット・SNSを利用した犯罪に関して「サイバー被害特捜部」が設置されています)などに被害届の提出の相談をすることも場合によっては有効です。

このように被害届の提出には注意すべき点が多くあります。

また,投資被害の事案では,加害者の特定が困難である上,国際的な捜査が必要になることも多く,そのことが警察官が被害届の受理に積極的ではない理由の一つであるといえます。

したがって,被害届の提出にあたっては,法律の専門家である弁護士に相談することも検討に値します。